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深紅 / 野沢尚




心を揺るがす犯罪心理。
一家を殺された娘が、犯人の娘に会いに行く。
この設定だけでゾクゾクします。
しかもどっかのヘッポコ映画みたいに、復讐のために殺しに行くわけではありません。
話はもっと複雑です。
行動面でのサスペンスというよりは、心理面でのサスペンスな感じがします。
被害者の娘が抱く感情はとても恐ろしく、とても悲しいです。
この複雑な感情を、見事に描ききっています。
サスペンス作品なので、ビジュアル的に怖い部分もありますが、「深紅」の読みどころはやっぱり心理的に怖い部分にあるかと思います。

深紅(しんく)
著者:野沢尚(のざわ ひさし)


ストーリー
修学旅行中のある深夜、奏子は担任から家族が事故に遭ったことを知らされ、急遽タクシーで東京へ向かう。凶報を聞いた時から家族が惨殺されたことを悟っていた奏子はその日以来、宿泊先から病院に向かうまでの「四時間」に幾度も襲われる後遺症をもつことになる。8年後のある日、加害者に自分と同じ年の娘 未歩がいることを知り、素性を隠して近づくことになる・・・。


まず、修学旅行先から東京へ向かう主人公・奏子の心理描写がすごく事細かで丁寧です。
これから目にする悲惨な出来事に身構え、心を閉ざそうとしていく様子が丁寧に描かれています。
この冒頭の心理描写から、被害者の娘として生きていくことの怖さや辛さや悲しさを感じ取っていくことができます。
次のチャプターは、犯人から裁判所への上申書という形で、幼い子供2人を含む一家4人惨殺の経緯が、事細かに描かれていきます。
オレはあんまり興味がないんですが、サスペンスファンなら喜びそうな凄惨なシーンがあります。
まさに、目を伏せたくなるようなシーンです。

そして、この次のチャプターからが犯罪被害者の娘・奏子と、犯罪加害者の娘・未歩の物語となります。
ここからはビジュアル的には穏やかですが、心理的には一層の恐ろしさを含んでいきます。
物語は奏子の視線で進んでいくので、未歩の本当のところの気持ちは描かれていないんですが、立場が正反対の2人の歩んできた道や、怒り、悲しみ、想いなど、想像も及ばないような心理を感じ取ることができます。
また、国家が人を殺すという死刑制度や、もう改正されましたが、被害者側が裁判に参加できないジレンマなど、裁判制度についての言及もあります。

全体を通して、被害者の娘の不安定な心理や想いに終始ハラハラドキドキさせられ、内に秘める怒りや悲しみに背筋を凍らされる一冊でした。

映画化もされました。
映画では心理面よりも、ビジュアル面が強調されていたように感じました。
心理は映画では見えませんからね。
ただ、心理が描かれない分、登場人物たちの考えが見えず、それが余計に怖かったりもしました。
また、最後に原作にはないシーンが加えられています。
ちょっとしたシーンなんですが、物語を根底からひっくり返しかねないシーンです。
それはどうだろうと思う人もいるでしょうが、個人的にはそういう解釈もありかなと。
少なくとも、もう一度小説のほうを、違う解釈で楽しめそうです。

被害者の娘・奏子を内山理名、加害者の娘・未歩を水川あさみが演じています。
内山理名さんは、かなり頑張っているように見えましたが、原作にあるような複雑な感情は表現しきれていないように感じました。
というか、それは不可能なんだろうけど。
でも、もし他の女優さん、例えば宮崎あおいさんあたりがやっていたら、全く違う映画に仕上がったんだろうなとも想います。
この映画で最高の演技をしたのは、一家4人を殺した都筑則夫を演じた、緒形直人さんだと思います。
積もっていく恨みを見事に表現し、圧巻なのは殺害のシーン。
このシーンの演技は最高でした。

キャストがかなり豪華で、斬新です。
安めぐみさんや、堀北真希さん、塚本高史さんなどを起用しています。
脇役人はかなりの実力はぞろいで、すばらしい演技を見せてくれています。
ちなみにですが、ファンの方に吉報です。
内山理名さんと、水川あさみさんのキスシーンがあります。
濃厚ではありませんが、かなり長いです。
ただしバックがビックカメラ。


原作・脚本:野沢尚(のざわ ひさし)
監督:月野木隆(つきのき たかし)

秋葉奏子:内山理名(うちやま りな)
都筑未歩:水川あさみ(みずかわ あさみ)
中垣明良:内田朝陽(うちだ あさひ)
渡辺巧巳:塚本高史(つかもと たかし)
タクシーの運転手:小倉一郎(おぐら いちろう)
奏子の友人:安めぐみ(やす めぐみ)
井原先生:南野陽子(みなみの ようこ)
奏子のおばさん:田中好子(たなか よしこ)
カウンセリングの先生:島田陽子(しまだ ようこ)
奏子の父:小日向文世(こひなた ふみよ)
都筑則夫:緒形直人(おがた なおと)
奏子の少女時代:堀北真希(ほりきた まき)

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